浅羽 秋穂

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  1学期の終業式。 あたしは失恋の傷を隠すように、皆の前で気丈に振る舞った。 パパにもママにも友達にもお兄ちゃんにも、夏樹と別れた事は言っていない。 夏樹との事を聞かれたら話すけど、聞かれない内は自分から話しはしない。 今はまだ口にするのすら辛いから。 終業式の為に全校生徒が体育館に集まって身長順に整列する中、あたしの心は落ち着かない。 夏休みについて何か話してる校長の長話も、棒立ち状態でぼんやりと聞き流していた。 この体育館には夏樹もいるはずだから、気が気じゃない。 夏樹は今どんな気持ちでここに居るんだろう。 あたしの事なんてもうとっくに吹っ切ったかな。 嫌いになったかな……。 【それでは終業式を終了します。整列したまま速やかに教室に戻って下さい】 進行役だか司会役だかの先生がマイクで生徒達に指示を出し、体育館の端の列から生徒達が順に体育館を出て行く。 うちのクラスの番が訪れて身長順の後ろから移動を始めると、女子で一番背が高くて先頭になるあたしよりも後ろにいるはずの直哉が背後から駆け寄って来た。 「な!今日成績表貰う日だなー」 あ、そうだった。
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