衣野 慎吾

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入学早々こんな嫌な思いをしなきゃならないなんて、胸糞悪いったらない。 あたしはイライラしながら玄関へ向かって校舎を歩く。 「あ!彩芽ちゃーん!」 2階から1階の間の階段を降りている途中、背後からあたしの名前を呼ぶ男子の声がした。 足を止めて振り返ると、2階の踊り場から知らない3年生の先輩二人が笑顔であたしを見ている。 誰?お兄ちゃんの友達だっけ? それとも友達のお兄ちゃん? 「今から帰るのー?」 「んじゃー途中まで俺らと一緒に帰んなーい?」 あたしが立っている段まで降りて目の前で止まった彼等は、妙に胡散臭い笑顔であたしを誘っている。 一緒に帰ろうも何も、誰? 「うわ、ほんっと可愛いな……」 「この出来上がり方でまだ中1かよ?」 至近距離から舐め回す様に全身を見られて少し鳥肌が立った。 こんな事を言って来るなんて絶対に知り合いじゃない。 何かキモい。 「お前ら何やってんの?その子かなり引いてるぞ」 突然、階段の上の方から違う男子の声が聞こえた。 声変わり後の落ち着いた低い声。
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