衣野 慎吾

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「あ……はい、あたしなら大丈夫です」 「そっか。良かった」 慌てて返事をすると、美形な先輩は目を細めた優しい顔で笑い掛けてくれた。 その魅力的な笑顔に乙女心が持っていかれそう。 「あ、あの!助けてくれてありがとうございました!」 「ん?ああ、いやいや。2つも上の男子に絡まれたら怖いよね」 深々とお辞儀しながら御礼を言うと、彼は階段を降りてあたしの左肩に右手でポンと触れる。 やだ、何このスマートさ。 「あの、うちのお兄ちゃんと友達か何かなんですか?」 「俺?いや、衣野とは顔見知り程度の関係だよ。同じクラスになった事無いし」 「そうなんですか」 確かに、この人はお兄ちゃんやその友達とはタイプが違う。 下品な感じが全く無くて、知的な雰囲気で物腰も柔らかい。 「あの、お名前訊いてもいいですか?フルネームで」 名札に“浅羽”と書いてあるけど、出来れば下の名前も知りたい。 「浅羽(あさば) 夏樹(なつき)です。四季の夏に樹木の樹で夏樹」 彼は優しく微笑みながら名札も指しつつフルネームを教えてくれた。 浅羽 夏樹……名前まで素敵。
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