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夏休み中盤の午前。
「浅羽とデートっすかぁ?」
玄関でスニーカーを履いて出掛けようとしていると、背後から寝起き声を掛けられた。
タンクトップにハーフパンツ姿のお兄ちゃんが、寝ぼけ眼で頭を掻きながら階段前に立っている。
学校中の夢見がちな衣野 慎吾ファン達にこの姿を見せてやりたいもんだ。
「直哉の宿題の手伝い」
「は?直哉?直哉と二人でか?」
「そうだけど文句ある?」
お兄ちゃんに背中を向けたまま淡々と受け答えた。
何だか苛々してしまう。
「……別に俺はどうでもいいけど、浅羽がどうなのかねー。浅羽って独占欲強いみたいだし」
夏樹が独占欲強いなんて、何でお兄ちゃんが解るんだろう。
あたし自身は夏樹から束縛されてるなんて感じた事は無いのに。
それに今は。
「もう夏樹とは別れたから問題ありませーん」
そう告げて、直ぐに玄関から外へ出た。
お兄ちゃんに色々と突っ込まれるのは面倒。
「はあっ!? 別れたぁっ!?」
玄関のドアを挟んでるというのにデカい声。
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