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「浅羽先輩って素敵だよねー」
その日の夜、あたしはお兄ちゃんの部屋のベッドに座って枕を抱えながら未だポーッとしていた。
頭の中には浅羽先輩のあの笑顔が浮かんでいる。
「は?浅羽?」
「生徒会長の浅羽さんー」
「……ふん。ガキの癖にいっちょ前に浅羽とか」
床に涅槃像ポーズで寝転んでテレビを観ていたお兄ちゃんが、夢うつつな表情のあたしを見て馬鹿にする様に鼻で笑っている。
ムカつくから蹴飛ばしたくなったけど、浅羽先輩の上品さを見習ってあたしも上品にならなくちゃ。
「ね、浅羽先輩ってどんな人なの?生徒会長やるぐらいだし、やっぱり頭良いの?」
「あー?……まあ学年トップだし、先生達も信頼してるらしいけど……」
テレビを観ながら怠そうに答えたお兄ちゃんの言葉で、益々胸がときめく。
成績優秀、美形、高身長、美声、生徒会長、そしてとにかく優しい。
やだ、完璧過ぎる……。
「そーなんだー。そんな感じしたもーん。お兄ちゃんとは全っ然違うし」
爽やか王子は浅羽先輩であって、お兄ちゃんが爽やか王子である訳が無い。
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