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「そーいや確か衣野って超可愛い妹いるんじゃなかったっけ?」
「有名だよな!しかも似てるって話!」
「じゃあ間違いねぇかな。いやー、さっすが王子の妹だなー」
先輩達は遠くなるあたしの後ろ姿を遠巻きに眺めつつ確信した模様。
やっぱりお兄ちゃんは中学でも有名人なんだな。
“衣野”なんて名字は滅多に無いし、そもそもあたしが似てると言われてきたその人は一人しかいない。
さっきの3年生であろう先輩が言った“衣野”とは、その先輩の同級生の事。
“衣野 慎吾”
この明智中3年生の男子で、あたしの2歳上の兄。
「いた!あの子、あの子!」
「うおお!すんげー可愛い!」
「あー、やっぱ似てんなー」
1時間目の授業終了後の休み時間。
教室の前方ドアと後方ドアの両方から、声変わりした男の子達の騒ぎ声が聞こえた。
自席に横に座って後ろの席の友達と話していたあたしは、騒ぎ声に気付いて前方ドアの方を見てみる。
前方ドア口にも後方のドア口にも大勢の男子生徒達が集まっていて、あたしの顔をまじまじと観察していた。
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