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電車の窓の向こうは雨がたくさん降っていた。
全体的に灰色っぽい景色は私達を静かにさせた。
「ハル、私ね視界が悪いと不安になるんだ。」
「そう??俺は視界が悪いと安心する。」
「はは、なんでえ??」
「世の中見たくない物がたくさんあるんだよ。」
チラッとハルの顔を見た。なぜか悲しい表情だと思った。
「そうだね、でも私はそれが見えないのが不安。」
「そっかあ^^」
ニタッと笑うハル。
私もつられてニタッと笑った。
街中の商店街は雨だというのにたくさんの人であふれていた。
はぐれるかもしれない…
「ご飯、どこで食べる??」
「ハルは何食べたい??」
「桜井さんは??」
質問を質問で返す会話はどことなく虚しい。
「ファーストフードかな。」
「いいよ、じゃあ…あそこ入ろう。」
いつも少食のくせに、ハルは見栄をはったのかたくさん頼んだ。
そして案の定残した。
(もったいない)
私はそう思ったけど、自分もハルの残りは食べられなかった。
「私は少食だから。」
と、見栄をはった。
そして、多分お互い見抜いていた。
「街中ってさあ~、自分が何処にいるかわからなくなるよね。」
「わかる、俺方向音痴だから余計w」
「だと思った♪」
ハルは方向音痴。そんなの知っているよ。
下らない話をいっぱいした。
だからこそ楽しいんだ。
残された時間をどう過ごすかは私達の勝手なんだから…
あと4時間。
時間が私を焦らせた。
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