小説)夏休みにて。

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「皆そろったな。」 「さっさと行こーぜ、龍也。」  茶髪の少年が待ちきれないといった様子で黒髪の少年に言った。 「健次、そう焦るなよ。じゃ、綾香たちも行くか。」  龍也と呼ばれた黒髪の少年は3人に声をかけると、深夜の高校に向かった。  彼らは高校1年生。4人は高校に入ってから知り合ったのだが、今では何処にでも4人で遊びに行くほどの仲だ。  高校には誰も残っているはずはなく、聞こえるのは4人の足音と話し声だけだった。 「うぅ、やっぱり夜の学校って不気味……。」 「大丈夫だって。本当に綾香は怖がりなんだから。」  長い黒髪の少女を、ショートのよく似合う黒髪の少女が笑いながら励ます。  4人は1つの部屋の前で止まった。 「ここ、だな。」  龍也が確かめるように言った。声が少し上ずったように聞こえる。  この学校には昔から、とある噂がある。夜中の1時ぴったりに、学校の3階の1番北側の部屋のぞくと、その中に誰かがいるというものだ。どこかあやふやなせいだろうか、信じてる人は結構多い。  今日、4人はこの噂を確かめるために学校に忍び込んだのだ。そして、目の前の部屋こそが例の部屋となる。 「時間は?」 「……1時1分前。」  健次が綾香に時間を聞く。 「先に逃げたら承知しないからね。」  笑顔で言いながら、ドアの窓から部屋の中がのぞける位置に陣取る。他の3人も慌てて続く。1秒が永遠に感じる。時間が過ぎる毎に、4人の緊張も高まる。  そして――1時。 「…何も、ないな?」  最初に健次が喋った。 「そうみたい‥だな。やっぱり噂は噂か~。」 「でも、何にもなくてちょっと安心しちゃった。」 「あはは、綾香らしいね。とりあえず帰ろっか。」   
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