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20分後、彼らは校門の前に集まった。そこで、今夜の感想を互いに話していた。
「……あれ?1人少なくない?」
真っ先に異変に気付いたのは綾香だった。
「ほ、本当だ。3人しかいない。」
「でもさ、俺に、健次に、綾香だろ。……いないのって、誰なんだ?」
そこで初めて、3人の顔が見る見る青くなっていく。
「だ、誰かあいつの名前が分かる奴いるか?あの、ショートの奴の。」
「あたし、分かんない。」
「俺も知らねぇよ!……そういえば、俺ら何時からあいつと付き合ってたっけ?」
健次の発言に2人ともハッとする。今まで自分達は、ずっと3人だったんじゃないのか?よく考えれば、あの少女に会ったのは今日が初めてだったんじゃないのか?
誰も何も言わない。少しでも何か言えば、目の前の事を認めることになるんじゃないかと思ったから。
「……ねぇ、あの噂ってさ……」
沈黙を破ったのは綾香だった。青白いという言葉がぴったりな表情だ。
「部屋にいるって、ちょうどあたし達ぐらいの女の子じゃなかったっけ……?」
3人は見つめ合った。再びの沈黙。ゆっくり頷きあうと、それが合い図だったかのように、それぞれの家に向かって弾かれた様に走り出した。
朝になれば夏休みでよかったと思うのではないだろうか?しばらくは学校に行く気にはなれそうにないだろうから。
+++++
真夜中の校庭に少女が1人立っていた。ショートの黒髪がよく似合う。
――今日は楽しかったな。また、誰かと肝試ししたいな……――
クスクスと本当に楽しそうに笑う声。声が消えた時には、校庭には人影はなかった。まるで、初めから誰もいなかったかのように……。
f 20090829
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