振り返りの怪

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その少年は列車飛び込みを見た数年後 そんな事件も忘れ 中学一年になっていた その日は夜遊びに出かけて深夜2時頃に帰宅途中 例の踏切を渡る… やはり… 遮断機に引っ掛かり 貨物列車が通過を眺めていた… 急に数年前の記憶が甦っていた… その時… 後ろから視線を感じる… 貨物列車が無事に見送り それでも… どす黒い視線が… 耳元に 首筋に 背中に べったり感じる… 生きた人間の視線 なんかじゃあ無い… 少年は 『フリカエッテハイケナイ』 少年は 『モシ…フリカエッテシマッタラ…カエレナイ…』 …と 何故か直感的に気が付いた… 少年は必死に前に歩く… 近所と思っていた家までの距離が果てしなく感じながらも… 後ろから 視線とブーツの足音が憑いて来るのを感じながら… ハンベ状態に成りながら…ようやく家に着く 何時も通り 深夜帰宅は一階の自室の窓から部屋に入る時… 窓ガラスに反射で 帽子を被った人影が… 少年の後ろに見えた時は… もうダメかと思った… でも… 『ルールハ ヤブラレテハ イナイ』と 『ココデ 恐怖心ヲアタエテ フリカエサセル ヤツノ 罠ダ…』 と直感的に気が付き 必死に振り向かずに窓を開けて… 靴を脱ぎ捨て 部屋に入り後ろを見ずに 窓を閉めて ベッドに飛び込み 日の出まで 布団の中で震えていた… 無事に朝を迎え 安心して昼過ぎまで寝ていた 昨夜脱ぎ捨てた靴を拾ろうとした時に地面に シッカリとしたブーツの足跡が憑いているのを見て 少年は更に恐怖を感じた 今…思うと… 基本的に家は結界になっている 出入りして結界を壊さないのはドワだけ 少年の自室が仏間で無かったら… 窓から浸入した時に 一緒にヤツは窓から浸入して来ただろう…
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