心、音にのせて

10/10
前へ
/50ページ
次へ
この一曲を弾き終えると、聴衆はいつもの倍位いた。 立ち上がって礼を言い、楽器を片付けようとする。 すると何処からともなく一つの掛け声。 「アンコール、アンコール…」 思わず結城の顔を見る。結城はニコッと笑い 「せっかくだからやろうよ…"sei"?」 と言って、鞄から一枚の紙を出した。 「あっ…それ………」 「昨日落としてったよ。昼会った時に返せば良かったんだけど、忘れてて…」 それは私の書いた楽譜――先程弾いていた曲の楽譜だった。曲自体は出来ていたけど、歌詞はまだ半分程しかついていない。 「後半の歌詞は即興で付けちゃった。ごめん」 「いや、それは別にいいけど…即興って凄いね」 「そう? それよりもう一曲、やろうよ」 私は力強く頷くと、ピックを握り締めた。 .
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加