儚い花

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紗綺は"そこ"で眠っていた。 永遠に覚める事の無い眠り。 「う…そ、だろ?」 紗綺は何時目が覚めてもおかしくない様な、安らかな顔で眠っていた。 「紗綺さんが息を引き取られたのはつい今朝方でした。 荷物は紗綺さんの意向で、悠斗さんに持っていて欲しいと言う事です」 それだけを言うと、医師は一礼して部屋から出て行った 「俺はどうすればいいんだよ…」 暫くして俺は紗綺の部屋に行き、荷物を整理し始めた。荷物といってもわずかしかないが。 そこで俺は花瓶にさしてある一輪の白い花――アザレアと、一枚の紙に目がとまった。 紙に書いてあったメッセージを読んでみる。 《いつ悠斗に会えなくなるかわからないので手紙を書きます。 私がこれを書いてから悠斗が読むまでどれ位の時間が経ったかは分かりません ただ私はその時絶対にこう考えているはず 『もう一回、一目でいいから 悠斗に会いたかったな』 って》 そこで途切れていた。 この手紙と花を見て、改めて涙が出てきた。 (知ってるぜ、白いアザレアの花言葉…) 白いアザレアの花言葉  《貴方に愛されて幸せ》
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