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ウエイトレスに声を掛けられたのは、食べ始めて少しした時だった。
こくりと頷くと、ウエイトレスは"ありがとうございます"と言って立ち去って行った。そして入れ替わりに相席の相手が来たのだが…
「「あっ昨日の…」」
そう、昨日の男だったのだ。その人も驚いた様で、目を見開いていた。
「取り敢えず座ったら?」
「あ、うん。そうする」
何かあった訳でもないのに、気まずい雰囲気が流れる。周りの喧騒も、今はもっと五月蠅くあって欲しいと感じた。
「…今日も弾いてたの?」
「あ…うん」
そろそろ耐え切れなくなる、という時にやっと沈黙を破ってくれた。
「土日は大抵弾いてる。特に土曜日は朝からずっといる事が多いかな」
「凄いな…曲のレパートリーとか大丈夫?」
「一応は。レパートリーが無くなってきたら新しい曲を聴く様にしてるから」
「聴くって、楽譜は見てないの?」
「耳コピ出来るから充分だよ」
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