心、音にのせて

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確かに楽譜って高いよね、と笑う彼。耳コピと言って驚かないという事は、彼も音楽系の活動をしているのだろうか…… 「ねぇ、君も音楽が好き?」 「うん、勿論」 一瞬キョトンとしたが、答えると同時にフワッと太陽の様に優しい笑顔になった。 「俺は高校を卒業したらヨーロッパに行くんだ」 「…語学留学?」 「違う違う。向こうの音楽を学びたいんだ」 だって芸術の本場でしょう? と。 「そうだけど、音大でもいいんじゃない?」 「音大は嫌だ。だって、変な固定観念を押し付けられそうじゃん?」 「…確かに」 納得出来る。しかしそれでも、海外に行こうとするのは凄いと思う。 本当に音楽が好きなんだなー、なんて彼を見ていると、時計を見た彼はやばっと言って席を立った。 「話の途中でごめん!これから用事あるから!」 「別にいいよ。用事ある時はあの公園に行けば会えると思うから」 「うん。あっ、名前聞いてもいい?」 「私? 私は千尋(チヒロ)」 「千尋ね。俺は結城(ユウキ)、じゃあね」 と、手を振りながら駆けて行く彼――結城。 (これじゃあ昨日と逆だな。) クスッと笑うと、私もそこを後にした。 .
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