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あるところに男がいた。
その男は優れた魔法を扱い、勇敢で、知性的だった。
そんな男は誰からも好かれ、そして誰からも尊敬された。
そんな彼は、一人の女を愛したと言う。
愛された女も、またその男を愛した。
誰もが二人の幸せを願い、誰もが二人の仲を羨んだ。
幸せに見えた二人。しかし女には、男に言えないある秘密があった。
女は魔女であったのだ。
『魔女』とは人々とは決して交えられない、人が一方的に忌み嫌う種族。
女は恐れた、いつかこの幸せな毎日が崩壊するのではないのかと。
自分の秘密を知って上で、男は自分を認めてくれるのかと。
女は決断する、男に全てを話す事を。自分の素性の事、自分がどんな種族であったかと。
女の心配は無用だった。男は女の全てを受け入れ、これまでの生活が続くだけだと言い切った。
そして、これまでどおりの幸せな生活が続いた…。
――続くはずだった。
男には親友がいた。幼き頃から共に遊び、学なんだ親友が。男の口は堅かったが、その友にだけは、自分の愛した女の事を話してしまう。
それが、悲劇の引き金となるとは知らずに。
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