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まず通されたのはゆうに50畳はある立派な応接間。
金色に輝く、さぞ高名な画家が描いたものであろう屏風に欄間の細工も見事としか言い様が無い。テーブルも黒檀の重圧なもので、黒光りしている。
床の間にも掛け軸と花が活け込まれている。老舗の一流旅館の華美だが、どこか落ち着いた広間と言った感じだ。
「仕事柄、こういうのを好む客人が多くてね。普段生活する部屋はもっと普通だよ」
草薙さんはそう言って苦笑いをした。
すぅっと襖が開かれ、運ばれて来たのはケーキとオレンジジュース。
持って来てくれたのは、先程草薙さんが“きさらぎ”と呼んでいた青年だった。
テーブルに座っていりアキラの前にコトリ、とそれらを並べると軽く笑いながら会釈をした。
「アキラ君、僕の一番弟子の如月陵雅ーきらさぎりょうがーだよ。君の躾役になって貰ったから、色々教えてもらってね。勉強は厳しいかも知れないけど、それ以外は優しいお兄ちゃんだから。」
「よろしく、陵で良いからね。アキラ君の事は総一郎様から少しだけ聞いてるよ。しばらくはゆっくり慣れようね」
草薙さんに続いて、陵さんが僕の緊張を解すように優しく言う。
ほんの少し、考えて言葉を返す。「僕、頑張って誰よりも強くなるから、それまで迷惑かもしれないけど・・・よろしくお願いします。」
力があれば、父さんも母さんも死なずにすんだ。
もしかしたら、殺されたのかも知れない。
僕が生きてるのがわかったら、草薙さんや陵さんまでもしかしたらーーー
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