§一・出会い§

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ぎり、と手に持っていた若い看護士がゲームで取ったと言ってくれたぬいぐるみを握りしめ、ベッドの上から睨みつける。 そんな自分を見て、ため息まじりで微笑みながら草薙総一郎は言葉を続ける。 「大丈夫、君の両親の一族達とは僕は違うよ。・・・まぁ、多少なりとは関わりあるけど仕事上でだけで滅多な事では会わない。 お父さんとは高校生の時出会ってね、親友だったんだ。お母さんと駆け落ちしてからも唯一、連絡を取っていた。ーー覚えてないかなぁ?三歳の時に一度会ってるんだよ?一緒に河川敷でお花見して、屋台でおもちゃのロボット買ってあげただろ?」 家族での花見に数人途中からやって来て、両親が珍しく家族以外の人間と笑いあってた事が昔あった。 屋台のおもちゃ屋で当時テレビでやってた特撮ヒーローのロボットが欲しくて、駄々をこねていたら誰かが買ってくれて、お父さんに甘やかすなって怒られながらも二人で笑ってた・・・・・。 「あの時のお兄ちゃん?」 ゆっくりと桜の思い出と共にその時の場景と人物の顔が思い出されていくと同時に警戒心が消える。 それを見て、ほっとした様子で話を続ける。 「そうだよ。僕は万が一の時に君を頼むと、二人に頼まれていたんだ。冗談じゃ無い、追っ手になんかやられる二人じゃないから笑って二つ返事でOKしたんだけどーーー僕が甘かった。あんな所で・・・すまない、二人を護る事が出来無くて。」 最後は本当に辛そうな顔で。 深く頭を下げた。 5歳の子供に頭を下げる大人。 端から見たらおかしな光景だったろう・・・。
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