悪魔、生誕

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 目を開けると、そこには一人しか見えなかった。何だろう。ぼやけてよく見えない。  手を伸ばして触れる、固い物。これは何? よく分からないけど、邪魔な物という認識はできた。  腕を振り上げ、下ろす。それが割れ、自分を縛っていた圧力が流れ出ていくのに合わせて僕も外に出た。もうあの邪魔な物は粉々になっていて、僕の体は濡れた場所に横になっていた。 「……すごいわ……」  上からした高い声。誰?  膝を床につくのが見えて、顔を上げる。  小さめの丸い眼鏡を掛けた奥には紺碧の目。肩まで伸びてる薄茶色の髪の毛先は内側に緩く曲線を描いてる。白い衣の下にはまた白い服が上下に分かれて着込まれていたけれど、細く柔らかい輪郭を持つ顔と体で、女の人だと分かった。 「…………だぁれ?」  女の人は嬉しそうに目を細め、胸の前で手を合わせた。 「人語も話せる……成功だわ!」  何が、成功なの? 教えてよ。 「私の名前を復唱なさい。ソフィア、と」 「……ソ、フィ、ア……」 「よく出来たわね。偉いわよ」  頭を撫でられた。悪い気分じゃあ、ない。  その人が手を打った。 「そうだ。あなたに名前をつけないとね。  あなたは……デミウルゴス。そう! デミウルゴスよ」 「デミ、ウル……ゴス?」 「そうよ。よく出来たわね。可愛い可愛い私の息子」 「息子?」 「そう」 「僕は、デミウルゴスだよ?」  尋ねると、目が見開いた。返事が来なかったから、「ソフィア」と呼んでみる。  
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