第一章 過去を知る男

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       3 「こんな家に住むなんてずいぶん儲かってるようだな、人の生活を覗いたりするのはずいぶんといい商売みたいだ…ただ、一人は寂しいなぁ。」 村上は皮肉を込めて言った。 二人はリビングで向かい合っている。仲間同士の久々の再会にしては会話が盛り上がる事は無かった。何せ、醍醐にとってはどこかへ消えたゴキブリが再び姿を現した様なものだ。いい気分はしないのも当然だった。 「用はなんだ?」 「まあそう言うなよ。ちょっとくらい思い出話でもしないか?」 「するわけないだろ。お前みたいな奴と。」 醍醐が冷たく言っても村上はまるで相手にしなかった。 「そうか、じゃあ本題を話そう。俺、今金が必要なんだ。ちょっと海外に飛ぼうと思ってな。」 「そんなの知った事か。やばいもんにいつまでも首突っ込んでるからだろ。」 「いやぁ、俺だけの話じゃない。昔はお前もおんなじ様なもんだった。」 「昔の話だろ?思い出話をする気はないって言ったはずだが。」 「でも、そんな昔の話が今につながるとなったら?」 「どういう事だ?」 その村上の話し方が醍醐は気になった。
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