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「志津里さん、どうしちゃったんです?料理に手をつけないで…」
「五月通り」にて、カウンターに座って悩む志津里に大将は思わず声をかける。
「いや、犯人のアリバイを崩す決め手が無いんだよ…」
「さっきからその書類みたいなもんずっと見返してますもんね。」
「何か犯人の知らない事が起きてるはずなんだ…ここに書いてないような。」
志津里が見ている数枚の書類はすでにくしゃくしゃになっている。志津里の悩みの度合いをはっきり表していた。
「大変ですね。」
「昨日から徹夜で見てるんだけど、掴めないんだよなぁ…そういえば今日はお客さん多いね。」
「そうなんですよ。最近バイトの女の子雇ったらサラリーマン人気に火が着いてね。」
大将がふと奥のテーブルに目をやる。まだ二十歳位の女の子が愛想良く客から注文を取っていた。
「確かにかわいいね。ガッキーに似てる。」
「ガッキー?」
「ガッキー知らないの?遅れてるな。」
志津里は娘の影響で知った情報を自慢気に語っていた。
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