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午後8時前、醍醐がくつろぐ所長室に見慣れた客がやって来た。
妙なネクタイは相変わらずだが、今日の志津里の表情は自信に満ち溢れていた。
「どうも今晩は。」
「一体何の用だ?」
「今日はあなたを殺人容疑で逮捕しに来ました。」
醍醐は志津里の強気なセリフに笑みがこぼれた。
「ほう、大きく出たな。」
「あんた笑ってますけどね、私は至って大真面目ですよ。」
「じゃあ聞かせてくれ、その理由を。」
「はい、殺された村上さんとあなたには繋がりがあった事はもう証明されました。あなたは刑事だった頃、恐喝で村上さんを逮捕します。しかし、彼は早々に釈放されました。担当したあなたと村上さんの間で何かの取引が行われ、それをきっかけに交流を深めていく。数年続けたある時、このままではいけないと感じたあなたは警察を退職すると共に探偵業を始め、一心不乱に働いた結果今の成功を手に入れた。そして現在、あなたの成功を知った村上さんは過去の悪行をタネに脅迫しはじめる。村上さんはあなたの消したい過去の象徴だ。だからあなたはピストルで過去を消し去った…いかがですか?」
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