最終章 名探偵の条件

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       29 志津里の車は浅香まりさを監視していた場所に到着した。 大きな二車線の道路を二つ挟んで向こうに「ロゾリノ」が見えた。 「ここですね?あなたが彼女を監視していた場所は。」 「ああ、そうだ。」 志津里の問いに答えたが、正確には今回は助手席に座っている為、ほんの少し遠い。ほんの少し。 「双眼鏡でご覧になってたんですよね?」 「ああ。」 志津里は双眼鏡を取り出す。 「本当に見えます?一応事務所のと同じやつ用意したんですけど…」 「じゃあ見てみるといい。彼女はあの窓際に座っていたんだ。今も誰か座ってるな。」 「あれは浅香さん本人です。彼女の向かいに座ってるのは私の部下の堀谷です…ああ、やっぱりよく見えるな。」 志津里は双眼鏡でじっくりと眺めている。 「だから言っただろ?」 「あの、あなたも見てもらえますか?確認したいんです。」 「構わないよ。」 醍醐は志津里の提案を受け入れ、双眼鏡を受け取った。 双眼鏡越しに見るとあの夜とほぼ同じ光景が見えた。ただ、向かいに人が座っている事以外は。 「ちゃんと見えてます?」
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