288人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
29
志津里の車は浅香まりさを監視していた場所に到着した。
大きな二車線の道路を二つ挟んで向こうに「ロゾリノ」が見えた。
「ここですね?あなたが彼女を監視していた場所は。」
「ああ、そうだ。」
志津里の問いに答えたが、正確には今回は助手席に座っている為、ほんの少し遠い。ほんの少し。
「双眼鏡でご覧になってたんですよね?」
「ああ。」
志津里は双眼鏡を取り出す。
「本当に見えます?一応事務所のと同じやつ用意したんですけど…」
「じゃあ見てみるといい。彼女はあの窓際に座っていたんだ。今も誰か座ってるな。」
「あれは浅香さん本人です。彼女の向かいに座ってるのは私の部下の堀谷です…ああ、やっぱりよく見えるな。」
志津里は双眼鏡でじっくりと眺めている。
「だから言っただろ?」
「あの、あなたも見てもらえますか?確認したいんです。」
「構わないよ。」
醍醐は志津里の提案を受け入れ、双眼鏡を受け取った。
双眼鏡越しに見るとあの夜とほぼ同じ光景が見えた。ただ、向かいに人が座っている事以外は。
「ちゃんと見えてます?」
最初のコメントを投稿しよう!