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「堀谷君、君は今カップで何を飲んでるの?」
志津里はそう言うと、スピーカーホンのボタンを押して携帯電話をダッシュボードの上に置いた。
「コーヒーです。エスプレッソ。」
堀谷の声が電話から聞こえる。
「じゃあさ、彼女は何飲んでるか教えてよ。」
志津里がそう言うと、今度は浅香まりさの声がした。
「…コーンポタージュスープです。」
その言葉を聞いた瞬間、醍醐は背中に寒気が昇っていくのを感じた。
「ありがとう。じゃあ食事続けていいよ。」
志津里は呑気に言って電話を切った。
「どういう意味かわかります?カップに入った中身はこの距離じゃ絶対に確認出来ない。しかもあんたはさっきコーヒーとスープの違いも分からなかった。そんな人にあの夜、彼女がパスタと一緒に何を注文したかなんてわかるはず無い。コーヒーだったかもしれないし他のスープかもしれない。しかし、あんたはあの夜注文したのはコーンポタージュスープだと言い切った。そしてそれは男が彼女に注文を指示したものと一致している。なぜ一致したのか?答えは簡単、何をオーダーするかをあんたが考えたからだ。」
一瞬の沈黙の後、醍醐は口を開いた。
「なるほどな…そんな所から足がついたか。」
「しかし巧い手を思い付いたもんです。」
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