第2章 1、≪想い≫

5/6
前へ
/178ページ
次へ
   ──5年前──  JR総武本線・浅草橋駅―  上野駅方面プラットホームに佇む智子・薫・寅の3人。  テンガロハットにサングラス。ハーフコートにボブソンのジーンズ。ウェスタン調のショート・ブーツといった出で立ちで、智子や薫に見送られ列車に乗り込む寅・・・・  「とも・・・丈夫な子、産めよ!」  サングラス越しに笑みを投げかけ囁く寅。  臨月間近の智子の躰を気遣い、優しく抱擁の手を差し伸べた。  「寅兄ぃ・・・どうしても行くの?」  と、物憂げに淋しさを覗かせて尋ねる智子。  「薫・・・ともの事、頼むぞ!!」  「寅兄ィ・・・せめて、智子の子供の顔ぐらい・・・」  と、訴える薫。  次の瞬間、発車の時刻を知らせるアナウンスが流れ、出発のベルが鳴り響いた。  そして―3人の間を隔てるように列車のドアが閉まり、無情の別れの瞬間が訪れた。  物憂げに寅を見つめる智子と薫・・・・  寅を乗せた列車が、ゆっくりとホームを離れて行く──  image=240911698.jpg
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加