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──5年前──
JR総武本線・浅草橋駅―
上野駅方面プラットホームに佇む智子・薫・寅の3人。
テンガロハットにサングラス。ハーフコートにボブソンのジーンズ。ウェスタン調のショート・ブーツといった出で立ちで、智子や薫に見送られ列車に乗り込む寅・・・・
「とも・・・丈夫な子、産めよ!」
サングラス越しに笑みを投げかけ囁く寅。
臨月間近の智子の躰を気遣い、優しく抱擁の手を差し伸べた。
「寅兄ぃ・・・どうしても行くの?」
と、物憂げに淋しさを覗かせて尋ねる智子。
「薫・・・ともの事、頼むぞ!!」
「寅兄ィ・・・せめて、智子の子供の顔ぐらい・・・」
と、訴える薫。
次の瞬間、発車の時刻を知らせるアナウンスが流れ、出発のベルが鳴り響いた。
そして―3人の間を隔てるように列車のドアが閉まり、無情の別れの瞬間が訪れた。
物憂げに寅を見つめる智子と薫・・・・
寅を乗せた列車が、ゆっくりとホームを離れて行く──
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