Act.1

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幸せはこうも簡単に崩れ去るものなのか。 些細な些細な幸せ。 それでもあの二人は大事にしていた。 壊れないように、 大きくなるように、 守って育てて。 壊される理由など何処にもないのに。 神様、もしあなたが仕向けた事だとしたら あたしは あなたを許す事は出来ません。 「っはぁ……っはぁ…」 病院の廊下を走り抜ける。 怒られようが止められようが、そんなもの全部振り切って。 「美加!!」 大切な大親友の名前をあたしは叫んだ。 本当なら笑顔で振り返ってくれるはずなのに。 彼女は静かに真新しいシーツのベッドに横たわり、点滴のチューブが腕に繋がれていた。 聞こえるのは美加の笑い声なんかじゃなく、ピッピッと定期的に鳴る機械音。 「…………」 「……健斗」 涙はもう枯れたと言わんばかりの顔でベッドの隣に座っている彼。 藤田健斗は美加の恋人であり、あたしの………好きな人でもある。 眉間に皺を寄せて、小さく肩を震わせていた。 あぁ………そうか。 『悲しい』よりも『悔しい』んだ。 「健……」 「なんで美加なんだよ…」 美加を見つめたまま、押し殺したような声でそう言った。 ふざけんなよ…と付け加えて。
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