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北の国 ××××年 初夏
「おぉーいっ!急いで下さいっ!早くっ!!」
「急いでるよっ!!そんなに焦らせないでくれっ!」
初夏の暖かい日、少し吹く風は涼しく草木を仰いでいた。
北にある国とはいえ、もう雪はほとんど溶けて冷たい水流となり、田畑や森の間を潤している。
地面には青々とした作物の芽や、綺麗な花も咲きかけている穏やかな日。
レスティア城では出産、誕生の儀が行われていた。
わかりやすく言うと、女王様が御出産なされると言うことだ。
一人しか産まれない後継ぎ、当然誰しもが王子殿下を望むわけである。
この国では数十年に一度の大イベントになる。
「ぁあ、やっと着きました。早く中へ、間もなくご誕生ですよっ!」
「わかってるよ…ティオ…しかし……もし女の子かと思うと……」
「……何を言っているのですっ!それでも!王様の子である事に変わりはありません!さあ早く王妃の側へ…」
「…あぁ……」
小さく頷くと、ティオが開けてくれたドアの中へ入り、ベッドの上にいる妻の元へ、足早に近づいて行った。
「わかるか?俺だ、間に合ったぞ……あと少し頑張ってくれ!」
そう言って握った王妃の手には、信じられないほどの力が入っていた。
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