001 マユ

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今まで生きてきた中で身についた価値観が崩れる。 私は彼女のカミングアウトに対応しきれず…ただただ否定するしかなかった。 彼女を否定したくないのに受け入れられない。 友達なのに… そんな自分に嫌悪感も抱く。 そして今日の講義も、案の定身が入らない。 まぁ残念ながらいつものこと…いや、いつも以上に右から左に流れていく。 私はレズビアンについて認識もなければ、知識もない。 彼女がカミングアウトしなければ、同性愛は本やテレビの中の話で現実ではありえないと思っていた。 こうやって私がごちゃごちゃ考える中、リカはというと全然気にしていない様子。 「そんな悩んでアホやなぁ!マユが知らんだけでレズビアンの人は沢山おるよ。それがたまたまチィやっただけやん」 さらに彼女の言葉は続く。 「それにチィはレズビアンでも何も変わりないよ」 そう言いきるとリカはつまらない講義に集中しだした。 「そんなんわかってるよ」 思わず私の口からもれた言葉は彼女には届かず、教授のマイクを通した声に負けてかき消された。
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