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いくら記憶を辿っても記憶にない。でも皆は暖かく'お帰りなさい'、'待っていました'なんて言ってくれる。
思い返せば元の世界でこんな言葉をかけてくれる人なんていなかった…。
母が亡くなってから父は家に帰らなくなり姉は強く自分に当たるようになった。
そう…元の世界にはもう自分自身を待っていてくれる。暖かく迎えてくれる人なんていない。
「…」
でも…帰らなくちゃ…
帰って勉強しなくちゃ…
でもなんて勉強しなきゃならないの…?
いくらがんばっても褒めてくれる人なんていないのに…
自分のため…?
私の夢は…
コンコン…
小さく遠慮がちに部屋の扉が叩かれた。
「はい」
「アリス…?」
「ノア?」
ガチャと小さな音でさえ静か過ぎるこの部屋では大きく聞こえる。
「どうしたの?」
「アリス。泣かないで…」
「えっ…?」
ノアはそっと手袋越しに私の頬に優しく触れて涙を拭う。
この動作で初めて涙を流していた事に気がついた。
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