1)信じる指。

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明日は話をしようと決め、自身も帰り支度をしていると、 「ねぇ、大丈夫?」 先程、迎えを知らせてくれた同僚が心配して声を掛けてくれた。 あの時の私は、トシオ君を見つめたまま動かず、真っ青になりながら脂汗を流して居たのだ。 私が同僚の立場なら同じ様に心配しただろう。 書類や食べかけのお菓子をバッグに詰めながら、 「んー…トシオ君にね、小指の爪塗られて焦っちゃったよ」 と、左手を見せながら答えた。 同僚は溜息を吐きながら、 「アンタも?」 と意外な事を言った。 私以外にも塗られた事のある人が居るの…? ホッとした様な、更に不気味さが増した様な複雑な気持ちになる。 無言の私を余所に同僚は話を続けた。 トシオ君の母親は宗教にハマッているのだと言う。
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