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トシオ君がまだ嬰児の時分、父親はリストラに遭い自室で首を吊った。
転勤族だった夫、この土地も住み始めて間も無く、友人は居ない。
幼い息子を1人で育てて行かなければならない焦燥。
両親は他界しており、頼れる実家は無い。
姑である旦那の母親は年金で細々と1人暮らし、頼れない。
親族は出来る限り力になると言いつつ、雀の涙程の金を1度寄越し、それきり。
そんな中、声を掛けられた。
『お宅の旦那様はまだ成仏出来ていない。首を吊った家で苦しんでいる。』
『その苦しみに色々な良くないモノが吸い寄せられている。弱っている貴女に協力者が現れないのもそれが原因。』
『私は貴女の味方。貴女が辛い時はいつでも力になる。貴女次第で助けてくれる味方は増える。困った時は頼りにして。』
支えの無かった彼女はその言葉を厚意と受け止め、甘えた。
葬儀から就職まで、様々な方面で、優しく事細かに面倒をみてくれた。
そんなある日、恩人に呼び出される。
『貴女を助けて来れたのは私1人の力では無い。他にも協力者が何人か居る。皆、貴女の不憫を自分の事の様に受け止め、援助してくれた。貴女に感謝する気持ちがあるなら会って欲しい。』
会わない訳が無かった。
感謝してもしきれない恩があるのだ、直接お礼を言いたい。
恩人に導かれるまま彼女は、表向きは婦人独立支援施設、実態は宗教団体と言う扉を開いてしまう。
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