2)甘い日々。

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―ガチャッ ―ガサリッ 「ハァ…またかよ。」 寝癖で跳ねた髪もそのままに、スウェット姿の女子高生、マリコは呟いた。 ゴミを出しにアパートのドアを開けた瞬間、外側のノブに掛けられたビニール袋が揺れ、渇いた音が鳴った。 毎週火曜はゴミの日。 母は明け方にはパートに出る為、ゴミ出しはマリコの役目、億劫だった。 いつからか、ゴミの日の朝、ドアノブにビニール袋が掛けられる様になった。 毎週掛けられて居る訳ではない。 不意を突いて、不定期に。 始めは送り主が部屋の号数を間違えて居るのだと思い、大家と母に相談し、何日か掛けたままにして居たが、自分宛の荷物だと名乗り出て来る住人は居なかった。 中身はその都度、違う。 最初はセブンスターが1箱、それと10と書かれた紙切れ。 次は大人用紙オムツが1枚、それと9と書かれた紙切れ。 角砂糖が1粒、8。 使用済みコンドームが1枚、7。 プリンの空容器が1つ、6。 記憶通りならば今日は、5。 「今日は・な・にかなぁー♪」 適当なリズムを口ずさみながらゴミ袋を床に置き、ビニール袋の中身を確認する。 ―ガサッ ―ぬるり 鉄臭さに顔を顰める。 「まだあったけぇし…」 子犬の頭が入って居た。 5と書かれた紙を口に啣えて。
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