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担任が、話が聞きたいと放課後、職員室に来る様、言っていたが行くつもりは無い。
(ったく、どいつもこいつもウゼェなぁ。)
適当に過ごして居れば、1日が終わるのは、あっと言う間だった。
玄関で親友が待って居た。
「朝の続き!気になっちゃって授業集中出来なかったんだけどー!」
「お前、2時限から爆睡だったじゃんよ」
眠る親友はそのままに、休み時間は他の友人達と過ごした。
友人達は気を使ったのか、誰も昨日の話には触れなかった。
靴を履き代え、2人並んで歩き出す。
「マリはマリパパと連絡取ってんの?会ってるん?」
親友は裏表なく、素直に何でも聞いて来る。
デリカシーが無いと敬遠する者が殆どだが、マリコはそこが気に入って居る。
「全然?出てってから音沙汰ナッスィー。あ、マスカラ見たいんだけど寄って良い?」
「パクる?」
「んー、買う。やめたんだよね、そーゆーの。やっぱ女手1つっての?バレたら泣かすじゃん母親。」
「泣けるー!」
「思ってねぇだろ!」
2人は笑いながらドラッグストアへ入って行った。
新作コーナーから気になるテスターを何本か選び、試し塗りしたが、既に塗り固められた睫毛に特に変化は見られなかった。
(ボリュームはどれも同じかなぁー)
チラリと親友に目をやると、テスターのアイライナーを下目蓋に引いて居た、鼻の下を思い切り伸ばして。
(その顔、放送禁止だっつーの)
マリコは笑いを堪え、1番安いマスカラをレジに持って行った。
用を済まし店を出た瞬間、親友は店員に手を捕まれた。
「!!!」
「ちょっと、事務所行こうか。そっちの子も一緒に。」
店員の声は冷たく、ビニール袋の犬が冷えて行く様を思い出させた。
「離せってオッサン!!触んなって!!触んなっ!!」
親友が藻掻き叫ぶ様をマリコは静かに見つめていた。
(さっきのアイライナーやったのかな。同じの持ってんなぁ私。あれ980円だっけか。言ってくれたらあげたのに。)
「パクッたの私だし!!その子関係ねぇから!!行けばいんだろ事務所!!」
親友は万引きを認め、無関係のマリコを逃がそうとした。
他の買い物客がチラチラと見て居る。
(制服で学校バレてんな、あぁ終わったー)
親友を見捨てる訳も無く、自らも事務所に行くと伝えた瞬間、
『あのぅ…私がお金を支払いますから、許してあげてくれませんか?』
品の良い、気の弱そうな初老の女性がそう申し出て来た。
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