2)甘い日々。

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担任が、話が聞きたいと放課後、職員室に来る様、言っていたが行くつもりは無い。 (ったく、どいつもこいつもウゼェなぁ。) 適当に過ごして居れば、1日が終わるのは、あっと言う間だった。 玄関で親友が待って居た。 「朝の続き!気になっちゃって授業集中出来なかったんだけどー!」 「お前、2時限から爆睡だったじゃんよ」 眠る親友はそのままに、休み時間は他の友人達と過ごした。 友人達は気を使ったのか、誰も昨日の話には触れなかった。 靴を履き代え、2人並んで歩き出す。 「マリはマリパパと連絡取ってんの?会ってるん?」 親友は裏表なく、素直に何でも聞いて来る。 デリカシーが無いと敬遠する者が殆どだが、マリコはそこが気に入って居る。 「全然?出てってから音沙汰ナッスィー。あ、マスカラ見たいんだけど寄って良い?」 「パクる?」 「んー、買う。やめたんだよね、そーゆーの。やっぱ女手1つっての?バレたら泣かすじゃん母親。」 「泣けるー!」 「思ってねぇだろ!」 2人は笑いながらドラッグストアへ入って行った。 新作コーナーから気になるテスターを何本か選び、試し塗りしたが、既に塗り固められた睫毛に特に変化は見られなかった。 (ボリュームはどれも同じかなぁー) チラリと親友に目をやると、テスターのアイライナーを下目蓋に引いて居た、鼻の下を思い切り伸ばして。 (その顔、放送禁止だっつーの) マリコは笑いを堪え、1番安いマスカラをレジに持って行った。 用を済まし店を出た瞬間、親友は店員に手を捕まれた。 「!!!」 「ちょっと、事務所行こうか。そっちの子も一緒に。」 店員の声は冷たく、ビニール袋の犬が冷えて行く様を思い出させた。 「離せってオッサン!!触んなって!!触んなっ!!」 親友が藻掻き叫ぶ様をマリコは静かに見つめていた。 (さっきのアイライナーやったのかな。同じの持ってんなぁ私。あれ980円だっけか。言ってくれたらあげたのに。) 「パクッたの私だし!!その子関係ねぇから!!行けばいんだろ事務所!!」 親友は万引きを認め、無関係のマリコを逃がそうとした。 他の買い物客がチラチラと見て居る。 (制服で学校バレてんな、あぁ終わったー) 親友を見捨てる訳も無く、自らも事務所に行くと伝えた瞬間、 『あのぅ…私がお金を支払いますから、許してあげてくれませんか?』 品の良い、気の弱そうな初老の女性がそう申し出て来た。
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