1)信じる指。

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「先生さようなら!」 母親と手を繋ぎ、園児達が帰って行く。 オレンジ色が全てを染め始めていた、もう薄暮だ。 トシオ君の母親は暗くなるまで迎えには来ない。 母子家庭だと聞いている。 女手1つで子供を育てるのだから遅くまで仕事を頑張っているのだろう。 今日も、オレンジがグレーに変わってもトシオ君は園の教室に居た。 いつもの様に、黙々とお絵描きをしている。 画用紙に目をやると、髪を1つに結った女性と小さな男の子が笑顔で手を繋いで居た。 ドレス姿の女性とスモック姿の男の子。 「お母さんとトシオ君の絵?」 洗髪も疎かであろうトシオ君の頭を撫でながら聞いてみた。 お絵描きを続けながらトシオ君は小さく頷いた。 あぁ、やっぱり。 お母さんも自分も綺麗な服を着て、ニコニコ生活したいよね。 トシオ君の心中を思うと切ない、やはり母親にガツンと言っ…え? 頭を撫でる手が止まる。 「何、してるのトシオ君」
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