1)信じる指。

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画用紙の中のお母さんが赤く塗り潰されて行く。 左手の小指だけが。 トシオ君は、私の問い掛けには答えず一心不乱に塗り続けて居る。 「トシオ君?折角、上手に描けてるのに」 暗に止める様、促したがトシオ君は手を動かし続けた。 ―ボキリッ 力を込めて塗っていたのだろう、赤いクレヨンは折れてしまった。 一瞬、マニキュアかな?とも思ったが違う様だ。  次は黒いクレヨンで塗り潰し始めた。 無意識に頭を撫でる私の手は下ろされて居た。 ―ボキリッ 緑色。 ―ボキリッ 茶色。 色に意味は無いのかな、左手の小指を塗る事が大事なのかな、お母さん遅いな。 そんな事をぼんやりと考えて居た。 迎えは未だだろうかとドアを見ながら聞いてみた。 「どうしてそこだけ塗ってるの?」
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