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いつの間にか、トシオ君は私を見つめていた。
無言のまま、ニタニタと笑いながら見つめていた。
気持ち悪い。
純粋な嫌悪感に襲われた。
私は虫が大の苦手だ。
例えば、蛾。
あの丸々と膨らんだ腹、吐き気がする。
例えば、蟻。
あのゾロゾロと蠢く粒、吐き気がする。
私が今、トシオ君に感じているのはそれらと同じだ。
蛾の腹を大量に口に押し込められている気分。
トシオ君のパジャマの染みが、潰れた虫の体液を連想させ、不快感が増した。
動かない私にトシオ君はクレヨンを向けた。
「何…してるの」
声を出すのが精一杯だった。
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