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体格に合った馬鹿力とタフさ、そして腹に据えた度胸から本業のヤクザも一目置いた存在だった。
市場の集会所の二階に住み込んで青果の卸しと、警備を兼ねていた。
(仁は基本的に朝が早いからこの時間にはいないわよね)
中田との距離を充分に保って一葉は周りを見渡した。
混んでいるものの、雨が降っているからか客足はいつもより少なく感じた。
濡れるのが嫌だからではなく、無差別殺人鬼“レインマン”に殺されたくないからだろう。
中田は惣菜を買った後、人混みを避けるように路地裏に回った。
(まずいわ)
急いで後に続く一葉の携帯が鳴った。
それは所長である亜紀子からの着信だった。
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