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桐山のハジキがダクトに向けられ、何度か火を吹いた。
工場内に銃声が響き渡る。
平松さんが動こうとしたが、すぐに銃口は平松さんに向けられた。
「わかったわよ。 だから……仁を殺さないで……」
ダクトを通して一葉のこもった声が聞こえた。
危険な状態や。
それはわかってる。
それでもまだ一葉が生きていた事に、おれは少し安心していた。
そっと腕時計を見る。
白亜紀が来るまでにあと30分はかかる。
その30分、何とかすれば希望はあるんやろうか?
全身を油と埃で真っ黒にした一葉が、頼りなさげにダクトの入口にぶら下がって降りてきた。
狭い空間をほふく前進で進んだんやろうな。
顔と腕、腹あたりは特に真っ黒やった。
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