木山一葉

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私は所長に言われた通りに救急車を呼ぶと、社用車のインプレッサに向かって歩き出した。 敷地内を出る寸前に、急に白いメルセデスが私の前を横切って止まった。 運転席にいるのは知らない男だったけど、風貌から平松組の人間だって事は間違いない。 まだ若い目付きが悪い男は車から飛び出て来た。 私は仕方なく、左の駐車場に向かって逃げ出した。 「待てっ!」 左から声がしたので横目で見ると、プラントの正面出口から走って来たのは中田だった。 くっ! 足がもつれて思うように走れない! 心臓が血液を必死で身体中に送り出す。 プラントの脇の道がどこに繋がるかわからなかったけど、もうそこしか逃げ道はなかった。
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