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ふと思った。俺は彼女のこと忘れてたけど、彼女は俺のこと忘れちゃったのかな。
突然高志の言葉を思い出した。
”千鶴ちゃんは記憶喪失”
俺は確かめたかった。
『あの、突然こんなこと聞くのは失礼かと思いますが・・・千鶴さん記憶喪失ってのは本当なんですか?』
俺は高志の言葉を信じてなかったが、もしかしたら・・・
『事故にあったの・・・』
『事故?』
突然の言葉に驚いた。
おばさんは静かに話し出した。
『あれはマー君が引っ越してから少したったある日・・・』
それはこんな話だった。
ある日千鶴ちゃんが小学校から帰ってきたとき、いつもはまだ帰っていないはずのお父さんが何故かその日はすでに家にいた。
しかも何やら様子がおかしい、酔っているようだ。家の中はメチャクチャ。
しばらくしておばさんが帰ってきた。すぐに夫の異変に気づき止めようとしたがおさまらない。それでも何とか夫を宥めようとしたとき、夫は急に暴力を振るってきた。しだいに暴力は娘の千鶴ちゃんにまで振るってきたのだ。
その時、
父親の暴力から逃げようとした千鶴ちゃんは家の階段を踏み外し頭から地面に落ちた。どうやらお父さんは会社をリストラされ、そのショックで酒に手を出して暴れたようだ。
そんなことがあって夫婦は離婚した。
『あの日のショックで千鶴は記憶を失ったの。それどころか男性に対しても恐怖心が芽生えてしまったの・・・』
いつも笑顔の裏にはこんな悲しい過去があったなんて・・・
『あの子がお店で何て言われてるか知ってる?』
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