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美紗の目、そして表情はいつもと変わらなかった。
それが一層不気味に見える。
「千華!」
稔は叫んだ。
しかし、千華は頭を押さえて呻いている。
返事が出来る状態ではない。
稔の声に美紗が反応した。
「千華、千華、千華って言わないで!」
美紗は稔を睨みつけた。
そして千華を見た。
「あんたさえいなければ!」
棒を握り締めると千華に駆け寄った。
「千華!危ない!」
稔は叫んだ。
立ち上がろうと、足に力を込めた。
火事場の馬鹿力か。
稔は驚くほどすんなりと立てた。
足を踏み出す。
立てたのは奇跡に近かった。
体重がかかった足は、見事に崩れ、稔は片膝をついた。
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