ヒーロー

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「立て……ないよね?」 千華は顔をしかめながら言った。 「もう限界だよ。動けそうにない」 「助けを呼びたいけど、稔を一人には出来ない。少しだけでも歩けない?」 「頑張ってみるよ」 稔は立ち上がろとした。 「ちょっと待って」 千華がそれを遮った。 「どうした?」 「美紗をなんとかしないと……いつ目が覚めるか分からないから」 稔は美紗を見た。 相変わらず、地面に転がったままで、ぴくりとも動かない。 「縛るものがあれば良いんだけど……」 千華は立ち上がった。 「これ使ってよ」 稔は言って、腕を動かすと、ジャージの袖を千華に見せた。 千華は頷いた。 袖に手をかけると、思いきり引き裂いた。 ジャージはうまい具合に肩の部分から破れた。
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