ヒーロー

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「……愛してる」 美紗は悲しげな表情を向けた。 稔の首に手がかかる。 稔は目をつぶった。 もはや、反撃する体力などない。 首にかかる力が強くなって来る。 顔が熱い。 快感すら感じる。 と、首にかかった力が緩んだ。 稔は目を開けた。 目の前で、千華と美紗が取っ組み合いをしていた。 髪を引っ張りあい、殴り合い、何か叫んでいる。 「千華……」 助けないと……。 稔は体を起こそうとした。 だが、全く動かせない。 テレビの主人公なら、こういう時、起き上がり、ピンチを脱出、出来るだろうに。 現実では無理な話だ。 ごめん……。 稔の目の前を闇が覆った。 薄れゆく意識の中で、誰かの悲鳴を聞いた気がした…。
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