エピローグ

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「気がつきましたか。具合はどうですか?」 医者が言った。 「大丈夫です」 「一か月ぐらいで退院出来ますが、無理はしないで下さいね」 医者はそう言うと病室を出て行った。 残った看護婦が、書類の様な物を稔に差し出した。 「書いてもらいたい物があるんですけど」 「変わりに書いてくれないか?」 稔は千華を見た。 「でも……私でいいの?」 「構いませんよ」 看護婦は言ってボールペンと書類を千華に渡した。 「大丈夫ですか?本当に無理はしないで下さいね」 看護婦は稔を見ると言った。 「痛みはないので大丈夫だと思います」 稔は言って千華を見た。 千華は書類にペンを走らせている。 「不便な事があったら、なんでも言って下さいね。それが仕事ですから」 看護婦は言って笑った。 「はい」 「包帯がほどけてますよ」 看護婦は言って稔の腕に手を掛けた。 鈍い音が病室に響いた。 稔は千華を見た。 美紗の言葉が頭に響く。 『ソックリよ。特に嫉妬深い所がね』 稔は千華の手元を見た。 「ボールペン壊れたみたいなので、他の貸してもらえますか?」 千華は真っ二つに折れたボールペンを差し出すと、笑顔で言った。
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