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「ごめんね。待った?」
千華は言って稔の前の席に座った。
「俺も、今来た所だよ」
稔は言ったが、千華は何も聞いていない様子だった。
「何かあった?」
稔は千華に聞いた。
「うん……美紗が、六日前から帰って来ないの」
千華は視線を落とすと言った。
美紗は千華の双子の姉だ。
稔でさえたまに間違えるぐらいよく似ている。
「連絡もないの?」
「うん……携帯にかけても、通じないし、会社にも行っていないみたいなの……」
千華は言って、溜め息をついた。
「警察には?」
「昨日行って来た」
「六日も連絡なしか……」
稔は腕を組むと言った。
「どこか、美紗の行きそうな所知らない?」
なんで俺が!。
稔は、思わず立ち上がり、声をあげそうになった。
実際は声もあげずに立上がりもしなかったのだが。
「知らないな。美紗の事なら、千華が一番よく分かってるだろ?」
「仲の良い友達にも聞いているんだけど、皆知らないって……」
そこにいつもの元気で明るい千華の姿はなかった。
「分かった。俺も探してみるよ」
「ありがとう。」
千華は安心したのか、少しだけ笑顔を見せた。
「じゃあ、私行くね。美紗の行きそうな所、色々探さなきゃ」
千華は言って立ち上がった。
「何か分かったら連絡するよ」
「またね」
千華は答えると喫茶店を出て行った。
美紗か……。
稔は宙に視線を投げた。
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