1.doubt

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手袋を忘れた両手を白い息で温めながら、お気に入りの黄色のマフラーに首をうずめる。 周囲を見回して、ベンチが全て埋まっているのを確認する。どうやらあの事件の後でも人気は健在らしい。 私はしぶしぶ白い壁に体をあずけた。 しかし視界の端にちらほらと見える警察官の姿やクリスマスツリーの違和感は、やはりあの事件を彷彿とさせた。 あの出来事の翌日の新聞には『恐怖のクリスマス』という大きな見出しと「いい気味だ!」という犯人の供述が載っていた。 お昼の報道番組のナレーターは、クリスマスに恨みでもあったのでしょうか、最近は物騒ですねという言葉で単調に締めくくっていた。 なんて淡白なんだろう。やはり関係の無い人にとって、あれは多発する事件の中の一つでしかないのだろうか。もしかしたら人が死んでいない分興味関心が薄いのかもしれない。 しかし、私が抱いた感想は違った。なんたって私はその場にいて、犯人を目撃したのだから。 あの光景は今でも思い出せる。目に焼き付いて離れない。 そう。あれはちょうど去年の今日のことだった―――――
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