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「嫌で………はい」
ミーナは驚いた。自分の意志ではない。自分の言葉ではないものが口から出てしまったから。
「すまない、ナナ」
このスイッチは、アンドロイドが暴走した時に強制的に命令を聞かせる装置。人口知能に異常が発生することがあるためマッドサイエンティストが使用することはなかった代物。
「博士……嫌です」
そう言いながらもミーナの体は裏口へと向かう。
ドン!ドン!バキ!
(よし!開いたぞ!)
(覚悟しろよ!科学者め!)
(地球を壊す悪魔め!)
人々が家の中へと侵入してきた。ミーナはそれが分かるといっそう懇願した。
「博士!私は嫌です!命令を取り消して下さい!」
そんなミーナに博士は泣き顔か笑顔か分からない顔でこう言った。
「おお!ナナ、今怒ったな!?どんどん人間らしくなるじゃないか!」
「博………士ぇ」
ミーナの体は、その時を最後に裏口から出ていってしまった。
「私の命はもうあと僅か。ここで逃げる訳にはいかないんだ。本当にすまない…………ナナ」
今まで自分の好きな物を作り続けてきたマッドサイエンティストは、この時マッドサイエンティストではなく一人のサイエンティストとして自分の発明品に向き直った。
「もう少しで完成する。いや完成させるのだ!」
そう叫びサイエンティストは作業を再開した。
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