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白い病院の廊下を、びしょ濡れの母娘が走る。どうやら集中治療室にいるらしい。部屋の前には大橋部長が静かにうつむいて座っていた。
「あ!お、奥さん…」
「大橋部長…あの…主人は……」
「中溝君は得意先から会社へ戻る途中で交通事故にあったようで……。タイヤがスリップしたみたいで、電柱に激突したようなんだよ。打ち所が良くないみたいでなんとも……」
そう大橋部長は口を濁した。
看護婦さんが顔色を変えてやって来た。
「ご家族の方ですね?今非常に危険な状態です。医師も全力を尽くしていますが…。中に入られますか?」
幸子は大きく頷いて、白衣に着替えていたとき、
ピーーーーーーっと嫌な電子音がした。
「心肺停止!心臓マッサージ開始!」
え・・・?
なに・・・?
嘘でしょ⁉
私は思わず和哉に駆け寄って足を揺すった。
「和哉さん‼和哉さん‼起きて‼死んじゃだめ‼
美里も居るんだよ⁉今日は早く帰れるって言ったでしょ⁉早く帰ろうよ‼ねぇ‼和哉さん‼‼‼」
ピーーーーーー
相変わらず嫌な電子音は変わらない。
数分後、医師は心臓マッサージを止めた。
「残念ですが…ご臨終です」
うそ………
嘘だ………和哉さんは寝てるだけだ………
「イヤァーーーー💦お父さぁんーーー💦💦💦」
美里は泣き崩れた。
幸子はただ…呆然とその場に立ち尽くしていた………
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