皇女の王冠

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本来ダンスや立食を楽しむ空間であるはずの大広間は、人の手によって惨劇の舞台へとぬり変えられていた。 先ほどまで優雅に流れていたクラシックも聞こえない。誕生日パーティーに出席していた者たちは、全員もの言わぬモノになってしまった。 そんな中、一人の少女が立ち竦んでいた。 少女の名はリリア。イヴレア王国第二皇位継承者である。 彼女の白い手、ドレス、心。全てが赤く染まっていた。 「皇女を探せ!この城のどこかに必ず居るはずだ!」 開け放たれた扉の向こう、遠くからはっきりと聞こえる声。 リリアはその声を聞き取っていたが、瞳孔から光は消え去り、上の空で指の先ほども動かす素振りを見せなかった。呼吸すら忘れてしまいそうだ。 「居たぞ、大広間だ!」 それを合図に何十人もの民達が大広間に押し寄せてきた。  棒を持った者。  鍬を持った者。  縄を持った者。  鋤を持った者。  包丁を持った者。
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