―第十二章 家族と師弟―

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彼女は僕のズボンを掴む。 上目遣いに僕を見る。 微かに見えた目は潤んでいるように見えた。 僕は戸惑う。 悩んでいたら、彼女が小さくくしゃみをした。 彼女の姿をよく見たら、薄着だ。 布一枚の古びた服。 裾はほつれたり、やぶれたりしている。 このまま放っておくのは可哀想だ。 それに寒いだろう。 僕は自分の着ていたローブを脱ぎ。彼女にかける。 彼女は驚いた顔で見つめてくる。 「これ着てて。どっか村とかで新しい服買ってもらったらいいと思う。 今日はもう休んでさ、明日また魔法見せてあげるから。 だから我慢して。 なんなら、休めるスペースでも作ってあげるよ」 僕は地面に手のひらをつく。 そこから魔力を流して、手の少し先にかまくらのようなものを作った。 これなら休める……だろう。 「だめかな? 今日はもう寝よう?」 彼女はしばらくうつむいていたが、こくんと頷く。 それから小走りでかまくらの中へと入っていった。 僕はそれを見届けると、テントのほうへ向かう。 一度彼女のほうを振り向いたら、彼女が小さく丸まって横になっていた。
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