―第十三章 平和な日常―

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「なんて返ってきました?」 朝、みんなで火を囲みながら朝食をとっている時にシグマが言った。 「まだ返ってきてないです。でもそろそろだと思いますが」 僕が答える。 「何が返ってくるって?」 「フロージア様からの返事。報告をしたから、この後どうすればいいか指示がくるんだ」 「ふーん」 ベルはパンにかじりつく。 僕の隣にいる彼女をチラチラ見ながら。 なぜかあの子は僕の隣を陣取っている。 ファーも今まで人には近づくことは無かったって言ってるから、不思議で仕方が無い。 話しかけても、反応があまり無いのは昨日通りだけどさ。 「そういえばフォート君」 「はい?」 「君の本当の名前はなんですか?」 僕とベル、そしてファーは頭に疑問符を浮かべていただろう。 「昨日はベルって呼ばれていましたから。本当の名はどちらですか?」 「え……」 ベルが戸惑いながら僕を睨む。 昨日の僕はベルと呼んでしまっていた。 「嫌なら言わなくてもいいんですが……この様子だとファーは知っているみたいですし、知らないのは私だけですよね」 シグマはわざとらしく肩を落とす。 「私はファーの師匠ですし、こうやって連れてきました。私だけ知らないのは寂しいですよねぇー」 大きく溜息をつく。 どうしても教えてくれとは言わないようだ。 遠まわしに教えろとは言ってるけど。 僕とベルは顔を見合わせる。 ベルはやれやれといったような仕草をすると、落ち込んでいるシグマに声をかけた。 「僕……いえ、私の名前はベルフォートです。普段はベルと呼ばれていますが、ある理由がありまして……シグマさんにはフォートと名乗らせていただきました」 「ある理由とは?」 「それは……」 ベルは悩んでいる。 自分が狙われていることを教えるべきなのか。 できるだけ人を巻き込みたくないと考えてるんだ。 巻き込まないようにするなら、教えないべきだけど……。 「教えちゃえよ。もう無関係ではないだろ?」 魔術騎士団に一緒にいるところを見られた。 ファーの師匠だとも分かったし、信用してもいい人だとは分かった。 それに、いつかは巻き込まれるだろう。 「そう……だね」 ベルは今までのことや、自分のことをシグマに話し出した。
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